富士フイルムにみる経営革新の要諦

 今朝の日経新聞に、富士フイルムHDの古森重隆社長のインタビューが掲載されていました。

 おりしも、「フィルムメーカー」としてかつて同社がお手本とし、後に世界的シェアを争ったコダックが、いよいよ経営破綻に追い込まれようというニュースが年明け早々に入ってきていました。

 

参考記事)コダックが数週間以内に破産法申請か

 

 主力事業が「斜陽産業化」する中で、成功体験から抜けきれずに没落したコダックを尻目に、新たな事業に参入することで主力依存体質つから脱却した富士フイルム。

 

 変化対応が遅れ、海外勢に後れを取っている日本メーカーが多い中で、強烈なリーダーシップの下に経営革新を果たした、数少ない大手企業の一つと言えるでしょう。

 

 同社の成功体験といえば、まずはフィルムメーカーとしてコダックに並ぶ世界企業となったこと。さらには、世界初のレンズ付きフィルム「写ルンです」の大ヒット。

 

 しかし、これらの成功体験に安住せずに、「ゆくゆくはカメラはデジタル化」するとの予測の中、デジタルカメラの分野にも参入、確固たる地位を確立しています。

 

 「アナログ(フィルム)からデジタルへの流れは当然」、と今だから言える話ですが、デジタルカメラが普及した当初は「フィルム写真の味わいに、デジタルカメラはかなわない」との見方が強かったはず。

 

 うまくデジタル化の波に乗り損ねた例として、一眼レフの老舗メーカー「コミカミノルタ社」の例があるように、「斜陽産業」とわかっていても

変化対応とはなかなか難しいものです。

 

 一方富士フイルムは、昨年は高級デジカメ「X」シリーズがヒット、本年中にはレンズ交換式デジカメである「ミラーレス一眼」にもいよいよ参入することを表明しています。

 

参考)富士フイルム、高級志向「X」シリーズを定義 高倍率機やミラーレスも投入

 

 さて、同社の経営革新は、フィルム・カメラ分野にとどまりません。フィルム事業で培った研究開発の蓄積を、他分野に応用します。

 

 その代表例が化粧品分野への参入。私が数年前に化粧品メーカー勤務していた頃、食品メーカーなど他業界からの化粧品分野への参入が相次ぎましたが、軌道に乗っているのはごくわずか(ロート製薬や大塚製薬など)。その中で、フジフイルム者の参入は、かなり異色に見えました。

 

 しかし、同社は全く畑違いの分野に参入したわけではありません。そのことが、同社の「ビューティ&ヘルスケアShop」サイトに記されています。

 

 「コラーゲンはカラダを構成する大切な主成分として知られていますが、じつは写真フィルムの主成分もコラーゲン。フジフイルムの写真研究の歴史は、そのままコラーゲン研究の歴史でもあるのです。


 その研究成果は、スキンケア化粧品やサプリメントなどに応用され、未来への可能性を広げています写真の色あせの原因は、活性酸素による“酸化”現象。フジフイルムは写真プリントを色あせから守るために、“酸化”を制御する技術の開発に力を注いできました。

 

 そして、この独自の技術は、製品や成分の酸化を制御する技術に結びつき、ヘルスケア分野に活用することで役立てています。」

 

参考)フジフイルムだからできること

 

 そんな富士フイルムHDが現在力を入れているのは、医療関連分野。本時の日経インタビューによると、同社の医療分野売上高は、全売上高の12%を占める2677億円。古森社長は、2018年度にはこれを1兆円に乗せると述べています。

 

 医薬品の製造とフイルム製造、この関連を古森社長は「写真フィルムの生命線である精密な生産体制技術が活用できる。」と述べています。

 

 同社による事業構造の変革への取り組みは、まさに「経営革新」の要諦そのものであると言えます。

 

 まとめると、以下のようなことになるでしょうか。

 

・成功体験に甘んずることなく、既存事業の将来性を冷静に見極める。

 

・自社の体力があるうちに、自社の強みが活かせられ且つ将来性のある分野に参入する。

 

・経営トップがリーダーシップを発揮し、新分野に経営資源(ヒト、モノ、カネ)を適切に投入する。

 

 書いてしまうと「当たり前のこと」ですが、実際に行動に移すのは至難のわざ。規模の違いはあれども、富士フイルム社の取り組みは、中小企業が学ぶべき「経営革新」のお手本企業といって良いでしょう。

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